デンマークで思った“幸せ”について

幸福度ランキング上位常連国、幸せな国というイメージが定着しているデンマーク(日本は54位: https://s3.amazonaws.com/happiness-report/2018/WHR_web.pdf)

ところがこの話題をデンマーク人の友人にふると「あぁ、幸福度ランキングね 笑」みたいな反応の人が多かったり。

そもそも幸せなんて定量的に測れないものなので、何を以って幸せですって言っちゃうのかが重要なのではと思いますが、

そんなぼんやり抽象的な“幸せ”について、留学して感じたことを書いてみました。

 

 

まずデンマークに着いて最初に感じたことは、ストレスフリーでリラックスした雰囲気。

ストレスフリーにも物理的なハードの面と精神的なソフトの面があると思うので、私の容量少ない記憶力の基、記憶を分けてみました。

 

ハード面

行政サービスから銀行のお金出入金、スーパーでの買い物に至るまであらゆるところまで、猥雑な手続きや無駄な時間を体験することが本当に少ない。特に日本に比べると本当に。

これにはいろいろ原因がありそうですが、

・書類社会でなく店員や業務員一人一人の裁量で迅速な判断ができる(個人によって対応や返答がバラバラという難点もある)

・デジタル化が発達している。銀行会社の垣根を超えて使えるMobilePayやクレジットカード、デビットカードの使用が田舎町のマルシェまで浸透していたり。

・いろんな場面でUXがめちゃくちゃ考えられてるデザインを感じる(デンマークのデザインを一言で表すと“democratic, 民主的”と言うのがよく言われる。何か物を作る時、""を一番大切にして組み立てていく精神が土台にあるのだと思う)

 あたりがパッと思いつくことです。

 

ソフト面

デンマーク国民でない私はハード面での恩恵を主に感じていましたが、特にデンマーク人のソフト面もかなりストレスフリーなよう。

・高い福祉の保障(学費、失業、医療はあまり心配しなくて良い。ただ給料からかなり税金持ってかれるのは覚悟)

・あまり過激な競争社会ではない。北欧の国は社会民主主義という立場を取っているらしい。ただかなり資本主義的な考え方は随所で持っている。

・人に勝つことより一人一人の長所を尊重することを大切にしている教育。

hygge文化、シェアや助け合いなどの精神性(大戦後、めっちゃ不毛の地しか無かったとこから決死の再起などの歴史も関係ありそう)

などなどの影響なのかな。

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Nørreport駅から大きな通りを入ったところにあるマルシェ。AIPH2014のデータによると、国民一人当たりの花の消費量はデンマークが世界1位らしい。

 

これらを反映してか、デンマーク人はいつもニコニコしていて穏やかな人が多い印象です。

道を歩いてる人も店員さんも、ちょっと話しかけるとすごい笑顔で返してくれます。私の笑顔レベル10が彼らの3なんじゃないかって位。そしてみんな、本当に心からくるような笑い方。

勿論自分の所属組織や政治に不満を持っている人も沢山、常に怒ってそうなデンマーク人もいるし、移民の人はそんなニコニコする余裕も無さそうだったりしますが。

 

そんなみんな幸せそうデンマークですが、物の多さ、物質的な豊かさで言うとするとデンマークより日本の方が圧倒的に上なのですな。

(日本は人口も多いのでGDPも今のとこ3位。デンマーク36位 *ただ人口次第なのでGDPだけ=豊かさではないと思いますが、物の生産量として https://knoema.com/nwnfkne/world-gdp-ranking-2017-gdp-by-country-data-and-charts)

ところがやっぱり物の豊かさは幸福度には直結しません。日本の幸福度は54位。何と驚きの54位。Money can’t buy happinessとかの記事を書いてるライターさんに美味しい例として使われそうな日本。(https://www.weforum.org/agenda/2018/03/these-are-the-happiest-countries-in-the-world/)

 

こういう調査を見てると、幸せを感じる事とはどこに重点を置くかということ次第だな、としみじみと思います。

超高級マンションに住んでるAさんは大きなお金を毎日動かす心休まらぬ日々を過ごし、毎日パートの主婦Bさんは夕方に狭い団地の家に帰ってリラックスしてテレビを観てる。これが見る人によってどっちが幸せかかなり分かれてくる感じで。

 

ただ、幸せになるためにお金を稼ぐ事は自然なことですが、行き過ぎて目的と手段が倒錯して、幸せ=お金っていうイメージを持ってる人が日本では多いんじゃないでしょうか。

日本人は、冷静に考えたら十分幸せが手に入ってる状況でも、本人は周りと比べて常に上を見ているので足元の幸せがわからない、みたいな状況の人も多いのでは。そして偉そうにこんなこと書いてる私も留学前はそっちの考えでした。 

 

ここでデンマーク人が上手いのは、“足るを知る”ことなのではと思います。

超高級マンションには住んでないけれど、平日の夜から家族友人と小さな家に籠ってhyggeする。フェラーリに乗るよりもそっちの方が幸せと言うデンマーク人、確実に多いです。

彼らが最も大切にするHygge(温かな居心地のよい雰囲気で大切な人とほっこりすること)という言葉。最近日本でも浸透し始めてますが、すごくお手軽で、ただキャンドルと友達または家族、部屋があればできます。

 

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シェアフラットでクラスメートと即席hygge。こういうどでかいキャンドルごろごろ売ってます。

 

ワークライフバランスもこの価値観に基づいていて、みんな毎日17時か18時までに仕事を終わらせ、猛烈な勢いで家に帰って行きます。

勿論遅くまで仕事してバリバリ稼いでる人もいるし、実業家みたいな人も沢山いるけど、彼らは仕事が純粋に楽しいからだったり長期休暇はちゃんと大切にしていたり、働く上での核みたいなのがお金と別のところにあるような気がします。ちなみに一人当たりの生産性は日本より高く、メリハリは大切にしている模様。(デンマーク5位、日本20位: https://www.huffingtonpost.jp/2017/12/20/intl-comparison_a_23313597/)

あとヤンテ・ロー(Law of Jante - Wikipedia)も相まってか、人をけなしてまで上へという考えは少ないと感じました。

  

デンマークで彼らの生活の仕方を見ていて感じた、幸せのかたち。優劣もどれが正解というのも無いですが、私はいろんなかたちを見ただけで大分人生観が変わりました。

 

取り留めなく書いてしまいましたが、要は

幸せの定義って人によるよね!!(そりゃそうだ)ということと、自分が大切にする価値観はかなり大切だなということなのでした。

日本で疲れてる人は、とにかく上へ上へ、キャリアー!の前に、自分にとっての幸せとは?を一旦立ち止まって考えてみるのもよいのかもですね。

 

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Amgerを南下してViberupの方までサイクリングした日。自然保護区も充実してます。(とは言ってもどんどん企業の再開月の手が伸びてきているらしい)

 

デンマークの税金と生活のはなし。

 

インターン先のayaさんから聞いた話やIPC元教師のユハンというおじいちゃんの授業から、デンマークでの税金の歴史や生活のはなしについてのあれこれです。

 

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Schmidt Hammer Lassenの建築でBlack Diamondの愛称で有名な王立図書館。水曜午後1時だったけど晴れると即座に日向ぼっこに繰り出すデンマーク人で外の席が埋まる。

 

25%の消費税、人によっては稼ぎの60%位程になる所得税など、たか~い税金で知られるデンマークですが、急に思いつきでそんなに高くなった訳でもなく。

歴史のなかで長い間をかけて徐々に高い税を払うことに慣れて来たそう。

 

ざっくりと歴史を三段階に分けると、

①1908~ : 教会が村を治める制度

キリスト教国(デンマークは約7割がプロテスタント)として、教会が農家の面倒を見なくちゃいけなかった。ここで裕福な人からお金を集めて貧しい人に再配分するという基礎システムができた。

1962 : Bismarkからの影響

市民革命を恐れていたので、市民生活もちゃんと面倒見てますぜと社会保険制度を作ったビスマルクデンマークはこの体制を真似ており、社会的な法律でドイツとの共通点が多いのはこのせいらしい。高い年金の構想もこの頃から芽生える(まだ実用はされておらず、その後法律ができたのは30年後の1891年)。

③1989~ : 社会民主主義の構想

1989から社会民主党が力を持ち始め、 選挙のたびに社会政党によって今の福祉の原型が少しずつ形作られて来た。この頃から、政党が途中で福祉政策止めると言いだしたら選ばれないという流れができる。

と、ざっとこんな流れらしい。

ちなみに1980年から失業率が上がり、福祉の恩恵を受けたかったら勉強か仕事しなきゃという仕組みも作って市民を活発化させる仕組みなども設けたらしい。

 

 

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証券取引所(Børsen) 前で写真を撮ってたら突然ポーズを決めてきた通行人のおにいさん。いい笑顔なので勝手に使いますよおにいさん。

 

現在国民の77.9%がこの福祉制度をキープしたいと考えているそう。だけど在日大使館の雑誌のArhus(ユトランド半島にあるデンマーク第二の都市)特集では結構「幸せだけど税金たけ~」ともらしている市民の人もいた。Taxes burden(税金の重荷)と呼ぶ人もいるらしい。

消費税では砂糖税や酒税(北欧の中では最安)、脂肪税などがあって、スーパーのミルク売り場では脂肪率が違うものが三段階ほど並んでいる。砂糖を沢山使ってるお菓子や脂肪率の高いミルクは割高になる為、節約すると少し健康になれる。

所得税は収入によるが45~60%程払う必要があり、大学の教授が「稼ぎの半分以上持ってかれるのよね~」と言ってる時の目が笑ってなかった。。

 

でも高い税金を収める代わりに福祉保障はとてつもなくしっかりしていて、

①病気

  • 病気になってもイエローカードに登録されてるホームドクター(地域のお医者さん)のところでの診察は無料。*処方箋出してもらったりすると薬代はかかる。

②失業保険

  • 失業しても次の職が見つかるまで期間限定で前の給料の90%は保障される。
  • 転職、キャリアアップを国が助けてくれる。転職期間中は月10万円位の失業手当がもらえ、必要なスキルを学ぶ為の講座を無料で受講できる制度もある。
  • そんなこんなで人の流れがとても活発。企業側も気軽に人を雇ったり、期間限定の働き方が一般的。
  • 高齢化で年金受給年齢が上がっちゃう問題は日本と同じらしい。 

③教育 

  • 子供たちは大学まで無料で教育を受けることができる。
  • 0~18歳 Children checkと呼ばれる補助金
  • 19歳~ 奨学金のようなものが月々貰える。(この制度もある為企業などのインターンシップでは給与なしが当たり前。というか払っちゃダメという決まりがあるらしい。)
  • 大学は私立なし、ランクも入試も無く高校時代の成績で決められる。
  • 学びたい意欲さえあれば留学などは国のお金でいける。(いいなぁぁ)

などなど。人生における大体の不安をカバー!

ayaさんが「家族の誰かが人生のどこかで福祉制度の恩恵を受けているから、高い税金も納得して払っている。長期的な安心と政府への信頼の上で成り立ってるんだよ。」と言っていたのが印象的だった。

政治関心も政府への信頼も高くない日本では、自分の身は自分で守る。その為に若いうちから自分のキャリアプランや人生設計に余念がなくて、何だか常に不安。そんな空気が漂ってる気がする。

もちろん日本がデンマークになることはできないし、別々の国の仕組みと生き方があるけれど、常にリラックスして笑顔で暮らしているデンマークの人たちの生き方はやっぱりいいなと思う。

そしてそんな生き方も、長い歴史の中で築いてきた努力あってこそなんだなと思ったのでした。

 

 

 

ではまた!次回は大学でのプロジェクトなどについて書きます。

 

🇩🇰 北欧デンマークでデザイン留学

こんにちは🇩🇰 

東京でデザインを学んでいる美大生です。

ただいまデンマークでのデザインと社会の関係を学ぶため日本の大学を休学して全8ヶ月の留学をスタートしています。

デンマークに来てから丁度2ヶ月ほど。バタバタと日々生きるのに精一杯だったのが大分落ち着いてきたので、今までのことを振り返りつつブログを始動させたいと思います!

 

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これぞデンマーク!なNyhavn

 

まず、なぜデンマークなのか。

昨年デンマークのDesignskolen Kolding(通称DK)の先生方が私の大学に来て開いたWelfareに関するWSがきっかけでした。DKは私の大学と同じく手を動かすことに絶対的重きを置いていながら、そのデザインのアウトプット先がより社会に向いているのだなと感じました。

社会背景やリサーチ、デザインで今の状況をどうよくしていけるのかということをグループで考えていくWSはとても新鮮で、ワクワクが沢山詰まっていました。その時の感動の勢いでデンマークデザインについて調べてみると、これまたスンバラシイ事例がざっくざくなのです。

デザイナーがより社会づくりに関わっているデンマーク、その理由を知りたいし日本にとってのヒントもあるんでは~という勢いのままDKにラブコールを送り、協定を結んでいないのでindividual agreementというかたちになりますが1セメスターの留学にこぎつけました。

 

基本はKoldingでのDesignskolen Kolding(通称DK)への1セメスターの留学がメインで、Koldingに来る前の2ヶ月ではCopenhagenでのインターンHelsingørでのフォルケホイスコーレ参加などをしていました。

 

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インターン先のシェアオフィスでのお昼ご飯。みんなで机を囲んで和気あいあいです。 

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IPCの英語のクラスメート。フォルケはみんなのびのびしていて本当に自由な場所です。

 

◎これまで

7~8月: インターン in Copenhagen
8~8月前半: Folkehøjskole 2週間のサマーコース"Danish culture and English"  in Helsingør

◎これから
9~12月: Designskolen Kolding留学 in Kolding

1~2月中旬: インターンアゲイン in Copenhagen

 なんとも詰め込んだスケジュールですが、できるだけ留学期間延ばしたかったのもありこうなりました 笑

 

改めて、留学にあたってご支援頂いたトビタテ留学japanの皆さま、全ての友達や大学の教授陣、影響を与えてくれたブログとその著者の方々などなど、ほんとに関わってくれた全ての人に感謝です。

 激SNS不精ですができるだけしっかり更新します~~

 

ではでは!